“冬”の沖島   2020年・冬
 沖島の冬は、寒さが厳しく、天候によって漁に出る日も少なくなります。
 
厳しい季節のなかで、島民は左義長祭り、獅子舞などの行事で一年の息災を祈り、また先人の知恵をかり保存食を作ったりして、暖かな春を待ちます。 
 


令和2年・冬の話題

 今年は全国的に暖冬と言われているように、沖島も例年より暖かな冬を迎えています。
 沖島の冬は、左義長祭りが行われる頃には厳しい寒さになるのですが、今年は年が明けても今のところ(1月下旬)一度も雪が降っていません。今まで暖冬と言われる年でも冬になると雪化粧をした比良山系が望めるのですが、今年は比良山系にも雪がないようです。昨年も雪らしい雪が降らず、琵琶湖の水質環境に大きく関わる“全層循環”がおこらなかったためか、琵琶湖の酸素量が減っているとのデータも出ています。そんな…いつもと少し違う冬を迎えている沖島から、いくつかの話題をお届けします。


 ホンモロコ引き続き好調♪ ニゴロブナは今年も…


“ホンモロコ南蛮酢漬け”
 今年は、昨年からの暖冬傾向により、琵琶湖の全層循環が起きなかったなど琵琶湖の環境の変化が、この冬の漁にどのような影響を及ぼしているかが懸念されています。
 この冬は、秋から引き続き“ホンモロコ漁”が好調です。生態上、時期的には獲りづらい時期なのですが、サイズにばらつきがあるもののよく獲れています。3月に入ると“子持ち”になるなど魚の価値が上がるため漁業者が増えることから、更に水揚げが増えることが予想されます。それに比べ、“ニゴロブナ漁”は今年も不漁なのでは…と懸念されています。ホンモロコより数十倍の放流がされているにも関わらず減少しているからです。
 この“ホンモロコ漁”と“ニゴロブナ漁”の明暗を分けているのは、ヘドロ層の影響と湖魚の生態の違いではないかと考えられています。「秋の沖島の話題」でも取り上げましたが、現在の琵琶湖の湖底は一昨年の台風の影響などで“ヘドロ層”が以前の3倍近くになっていると言われています。その状況下、ホンモロコは他の琵琶湖固有種に比べ適応能力が高く、この時期、湖底に潜るも浮き沈みが激しい生態をもつことから、ヘドロ層を避けて湖底より少し上に生息しており、ニゴロブナは常に湖底に身を寄せる性質を持つため、ヘドロ層のなかに生息しているのではないかと思われます。この生態の違いから、ホンモロコはヘドロの影響を受けることも少なく比較的漁網を寄せやすいところに生息しているためよく獲れ、ニゴロブナはヘドロの悪影響を受けている可能性が大きく生育にも影響を受けている可能性があること、およびヘドロ層の中に生息していることから漁網が入れにくく獲れない状況になっているのではと考えられるのです。このニゴロブナの不漁は、毎年恒例となりました『ふなずし手作り講習会』にも大きな影響を及ぼすため、漁協としても大きな懸念となっています。
 その他、琵琶湖を代表する“シジミ漁”も減少しており危機的な状況にあります。種苗放流をしても着床せず消滅してしまい、育ってこない状況にあります。
 また、“外来魚”も漁獲量が減少しています。沖島漁協では『琵琶湖を守るための漁業』として年間の目標量を決め、外来魚の捕獲を行っていますが、7〜8年前は定めた目標量をコンスタントに達成することが出来ていました。しかし、最近では定めた目標量を達成することが難しく、傭船(よう船)をして漁獲範囲を広げても獲れなくなっており、駆除方法なども変えていないことから原因は不明ですが、獲れないのではなく外来魚自体がいなくなっており、外来魚にとっても住みにくい環境になっているのでは…と考えられます。外来魚が減少していることは琵琶湖にとって喜ばしいことのように思えますが、実際には琵琶湖固有種の増加にはつながっていないこと、また“外来魚の捕獲”は漁協の事業として行っていることもあり採算確保が難しくなっていることなど、もどかしい状況でもあります。
 同じく外来魚の一種である“わかさぎ”は、漁獲量として多いといえるかは漁をしている漁師が少ないため判断できませんが、比較的浅いところで獲れているようです。この時期は深い所に移動するのですが、暖冬の影響か例年とは生息場所を変えているようです。
 このような冬の漁の様子からみても、昨年の暖冬により“琵琶湖の全層循環”が起こらなかったことや、ヘドロ層の増加などによる琵琶湖の環境の変化が漁にも顕著に現れているように思います。人工孵化など琵琶湖の資源増加に取り組んでいますが、この自然がもたらす環境の変化に先が見えない状況を実感させられるところです。
 しかしながら、このような状況下でも漁に出れば“琵琶湖の恵み”を与えてくれます。琵琶湖を代表するニゴロブナなど琵琶湖で育った魚は身がしまっていて味も良く、格別な味わいがあります。これは琵琶湖の水深が深く、水圧の高い環境で生育しているからではないかと言われています。また、わかさぎは他の湖で獲れるものは小さなものが主流なのに対し、琵琶湖で獲れるわかさぎは体長20cm前後のものが多いのも、この水圧が大きな要因となっているのでは…と言われてます。
    “琵琶湖の恵み”
 このように、気象の変化が琵琶湖の環境の変化に大きな影響を与えていると思っても、自然の営みに私たち人間は無力です。しかしながら、私たち漁業者は試行錯誤しながらも、この琵琶湖の恵みに感謝し、絶やすことなく次世代に受け継いでいくことを務めとし、取り組んで参りたいと思います。
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 嬉しい出来事です♪

 沖島では、年々、漁師の高齢化が深刻な問題となっていますが、この冬、私たち漁業者にとって嬉しい出来事がありました。
 沖島に移住されてきた青年が“沖島の漁業に興味がある”ということで、漁協組合長のもと、5日間の短期研修を受けられました。一緒に漁船に乗り、一から沖島の漁を体験していただきました。
 沖島漁協では、これまでも滋賀県、滋賀県漁連が主体となる『後継者育成事業』に指導者として参加するなど、後継者育成に努めて参りましたが、沖島に移住されてきた方が沖島の漁師に興味を持って下さったことは大変嬉しく思うと同時に、これからの励みにもなりました。
 今回は、漁協の短期研修でしたが、国が行う公的な研修制度もあります。これは3年間、給与をもらいながら漁業研修を受講する制度で、研修後は漁業就業者となり組合に所属することが条件となるものです。
 これからも“漁業に興味がある”という方々に情報発信を続けるとともに、漁業に興味を持っていただけるような情報発信にも努めていきたいと思います。

 ヘドロ層…深刻です

 冬の漁の様子でも触れたように、ヘドロ層の問題が深刻化しています。
 このヘドロ層は、一年以上前の台風などの影響でヘドロがたくさん流れ込み沈殿している状態で一年に一度起こると言われる「全層循環」も起きていないため、その層の厚さは以前の3倍くらいになっていると思われます。このヘドロ層は、昔のように琵琶湖に流れ込む廃棄物などが堆積したものではなく、外来プランクトンの死骸が堆積してできたものだと言われています。そのヘドロ層の中には現在の浄化システムでは浄化しきれないナノクラスの化学物質など“現代のゴミ”も含まれていると思われ、湖魚の成長に影響を及ぼすのではと懸念されています。
 また、漁自体にも弊害が出ています。ヘドロが毛布のようにな状態となり漁網の網目を覆ってしまうため、網をよせると水が流れ出ないため水圧により魚が出ていってしまったり、ヘドロ臭などの現象が起きています。これに対し漁網の網目を大きくしたり、手入れをまめにするなどして対処しているのが現状です。
 このような状況をみると汚染が進んでいるのでは…と懸念せざるおえません。この状況は意図的な汚染行為ではなく、いろいろな面で進化した現在の日常生活が知らず知らずのうちに昔とは違う汚染を進めてしまっているのではないかと憂慮しております。この琵琶湖を生活の場とする者として、これからも注意深く見守っていきたいと思います。


 救急艇『はるかぜ』−沖島の救急医療体制が改善されます♪

 この春、4月1日から救急艇『はるかぜ』が始動します。これにより沖島の救急医療体制が大幅に改善されます。
 沖島では、長年、離島が故に直面する急病人の救急搬送の問題に苦慮して参りました。現在は、急病人が出ると島の消防団員が消防艇で堀切港まで搬送し救急車に引き渡すという体制をとっておりますが、高齢化による消防団員の減少やほとんどの消防団員が島外に働きに出ているため、団員がいなければ緊急時でも消防艇を出すことができないなどの問題に直面しています。また、動かしてはいけない病人でも動かさなければならない事態にジレンマを感じることもありました。
 この
救急艇『はるかぜ』は東近江行政組合消防本部が主動で配備されるもので、救急車と連携し24時間体制で対応されます。救急艇は常時堀切港に係留され、救急時には救命士が乗船し沖島漁港まで出動します。救急艇は救急車と同レベルの設備が配備されており、いわば離島にも関わらず救急車が玄関先まで来てくれるのと同じ体制となるのです。そのため、病人を動かすことなく救命士が診察し対応を決めることができ、救急車に引き継ぐまで適切な救命措置が受けることができるようになります。また、救命士の判断により救急ヘリによる搬送も可能となります。
 島民の高齢化に伴い、救急事態が起きうる可能性が大きくなるなか、この
救急艇『はるかぜ』の配備は島の暮らしをより安心なものにし、心強い拠り所となることでしょう♪ 現在、沖島では消防士の方々が寒い中、救急艇の操縦訓練に励んでくださっています。消防士の方々に心から感謝いたします。

 1月12日(日) 左義長祭りが行われました

 今年も1月12日(日)、沖島の“左義長祭り”が行われました。今年も昨年のように雪のない暖かな日となり、当日は通船の臨時便を出すほど、多くの観光客の方が見に来られました。
 沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われており、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。今では、元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願をするお祭りとなり、観光客の方もたくさん見に来られる、島の楽しみの一つとなっています。
 今と昔では、お祭りの意味合いなども変わってきていますが、沖島の大切な伝統行事として受け継いでいきたいと思います。

 お知らせです

◆ “沖島 桜まつり”今年も開催する予定です♪

 今年(令和2年)の開催は、誠に残念ながら新型コロナウイルスの影響により中止させていただくこととなりました。何卒、ご了承いただきますよう、よろしくお願い致します。


“桜のトンネル”(島の西側)
 沖島漁協婦人部「湖島婦貴の会」では、今年も、毎年ご好評をいただいております“沖島 桜まつり”を開催させていただきます。
 沖島では、春になると島のあちらこちらで桜が満開となり、“桜色の島”となります。そんな桜色の沖島で郷土料理に舌鼓み・・・そんなお花見はいかがですか♪
 開催日時など詳細は決まり次第、ホームページ等でご案内いたします。



※沖島の桜の様子は“桜アルバム”でご紹介しています
※写真の“お花見セット”は昨年のものですのでご了承ください。


◆ 沖島の冬の風物詩 “獅子舞”

 沖島の冬の風物詩としてご紹介している“獅子舞”が、今年は2月23日(日)に行われる予定です。
“獅子舞”は、古くから伝わる沖島の年中行事のひとつで、各家庭を廻った後、漁港近くの広場で余興が行われます。(詳しい内容は、下記の『冬の風物詩』のコーナーでご紹介しています。)
 ぜひ、この機会に沖島へ足を運んでみませんか♪


◆ “塩切り鮒の予約販売”のご案内♪

 毎年、ご好評をいただいております「塩切り鮒の予約販売」を今年も3月から行う予定です。
 ご家庭で手軽に“ふなずし作り”を楽しんでいただけるよう、ふなずし作りの工程で最も手間のかかる塩切り(塩漬け)までしてありますので、後は夏の土用の頃(9月頃まで可能)に漬け込みしていただけば、年末年始頃には美味しい“ふなずし”を楽しんでいただけます。
 最近は他との競合も激しくなっていますが、沖島の“塩切り鮒”は水揚げされたばかりの新鮮な子持ちのニゴロブナを傷つけないように全て手作業で仕込むので、品質には自信を持ってお届け致しております。詳しくは
「塩切り鮒の予約販売」のページをご覧下さい。

冬の風物詩 〜〜ここからは例年の冬の沖島の様子をご紹介しています〜〜

 沖島の左義長祭り

 沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われています。
 元服とは、かつての武士階級で、男子なら十三才から十七才までの間に行われる、今で言う成人式のような儀式で「加冠の儀」といい、それが済むと大人の仲間入りをし、一人前の武士として出陣する資格を得たそうです。
 沖島の左義長祭りは、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。
 今では、元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて島民皆が参加するお祭、島の楽しみの一つとなっています。
“だんぶくろ”飾り

 年が明けると島全体で左義長祭りの準備が始まります。飾り付けをする竹を島民皆で集め、飾りの準備をします。男の子のいる家庭では吉書(きっしょ)さん”、女の子のいる家庭では“だんぷくろ”という飾りを作ります。この“だんぶくろ”は沖島ならではと言われており、「お裁縫が上手になりますように…」との願いを込めて一針一針、色紙を縫い合わせて作ります。
 そして、左義長祭の当日、お手製の飾りを竹に飾りつけ、広場に積み上げていきます。
    “飾り付けされた竹”


  “広場に積み上げられた竹”

“家族で飾付けをする島民”                   
  当日、公民館では、自治会と子供達が中心となり儀式を行なった後、飾り付けた竹を持って瀛津島神社へと上がります。
 瀛津島神社へ上がると、子供達は、ゆっくりと数回境内を回って神社を下り、左義長に火を入れる広場へと向かいます。
 以前は、元服する男子が瀛津島神社から下る際、行かせまいと青年団が邪魔をするなどして小競り合いをしました。神社の階段がとても急なため、島民はハラハラしながら見守ったものです。

“島の細い道を瀛津島神社へ
上がる子供達”


 “神社の境内を回る子供達”


 “広場へと向かう子供達”
 広場へ到着すると、いよいよ五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて、左義長に火が入れられます。その火を囲み、火が消えるまで島民の談笑が続きます。


“火を起こし左義長に火を入れます”
 
 “勢いよく燃え上がる左義長”
 獅子舞 

 島の年中行事の一つで、島の男子は、元服を済ませた翌年18才になると“獅子舞若連中”といい、伊勢大神楽講社の一行を迎えて、島中一軒一軒の“カマド払い”をします。
 この獅子舞は、鎮火守護の祈りの行事として古くから伝えられ、毎年2月から3月に行われます。午前中は各家庭を回ってお払いをしていただき、午後からは広場で獅子舞、余興が行われます。
 その見物に欠かせないのが“サト豆”というあられを砂糖で固めたお菓子です。「獅子舞の豆を食わんと良い日が来ん(春らしい日が来ない)」といわれ、今でも続く行事です。
 現在では、獅子舞若連中ではなく、決められた人が一行の送迎を行っています。

  
冬の味覚

 沖島の冬の味覚といえば、“わかさぎ”です。漁は8月下旬ころから始まりますが、冬の時期には、10〜15pほどの大きさに成長した子持ちのわかさぎが獲れます。
“わかさぎ”は骨が柔らかい湖魚で、天ぷら、南蛮漬けなどの料理に適し、また、この時期のものは子持ちなので“一夜干し”も大変美味です。
 また、この寒い時期を利用して、“お漬物”、“かきもち”などの保存食を作ります。お漬物作りは、ほとんどの家庭で行われているお正月前の年中行事のようなもので、自前の畑で採れた野菜を使って漬けます。
 ここでは、“わかさぎの一夜干し”“かきもち”、また年中食べられていますが、おせち料理の一品としても作られる“えび豆”をご紹介いたします。
◇ わかさぎの一夜干し
 
“わかさぎの一夜干し”は、塩水(水の量に対し1%の塩)にお酒を適量入れ、洗ったわかさぎを、そのまま3時間程度漬け、漬けたものを一晩、軒下等に陰干しにして作ります。
 一夜干しのわかさぎは、火が通る程度まで焼いて頂きます。海の干物とは、ひと味違う格別な味わいです。
 “わかさぎの一夜干し”は、なんといっても、わかさぎの鮮度が命です。獲れたての“わかさぎ”が手に入る沖島ならではの逸品です。

         《わかさぎの一夜干し》
◇ えび豆

  “えび豆”は、スジエビの代表的な料理で、日常的に作られますが、「腰が曲がるまでマメに暮らせますように・・・」と、おめでたい時やおせち料理のひと品としても、よく作られています。
 味・作り方は、各家庭で少しずつ違いがありますが、味は甘辛く、エビ豆の作り方の特徴として、大豆は柔らかく茹でたものを加え、エビがあまり硬くならないように短時間で炊き上げます。 

  ※ “えび豆”は通販でお買い求めいただけます。
     詳しくはこちらへ・・・
◇ かきもち

 “かきもち”は、昔から沖島の家庭で作られている保存食のひとつです。
 お餅をつくときに海苔、黒砂糖など入れて味付けし、切れる程度に四角く固めた餅を薄く(2〜3o程度)切り、藁で編んで吊るして、3ヶ月くらい部屋の中で干します。“かきもち編み”といわれ、どの家庭でも見られた光景です。
 作り方が餅つき機を使ったり、味付けをエビマヨ味(干しえびとマヨネーズ)にしたりと、昔とは少し変わりましたが、今でも多くの家庭で作られています。

《参考文献》
・ 「沖島物語」 西居正吉 著


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