“島の細い道を瀛津島神社へ上がる子供達”
H23年冬
沖島の冬は、寒さが厳しく、天候によって漁に出る日も少なくなります。 厳しい季節のなかで、島民は左義長祭り、獅子舞などの行事で一年の息災を祈り、また先人の知恵をかり保存食を作ったりして、暖かな春を待ちます。 |
今年の話題
今年の冬の沖島は、昨年に比べ雪の日も多く、寒さの厳しい冬を迎えています。
そんな厳しい寒さの中、1月16日に“左義長祭”が行われました。その様子などをご紹介いたします。
沖島の左義長祭り
沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われています。
元服とは、かつての武士階級で、男子なら十三才から十七才までの間に行われる、今で言う成人式のような儀式で「加冠の儀」といい、それが済むと大人の仲間入りをし、一人前の武士として出陣する資格を得たそうです。
沖島の左義長祭りは、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。
今では、元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて島民皆が参加するお祭、島の楽しみの一つとなっています。年が明けると島全体で左義長祭りの準備が始まります。飾り付けをする竹を島民皆で集め、飾りの準備をします。男の子のいる家庭では“ 吉書 さん”、女の子のいる家庭では“だんぷくろ”という飾りを作ります。この“だんぶくろ”は沖島ならではと言われており、「お裁縫が上手になりますように…」との願いを込めて一針一針、色紙を縫い合わせて作ります。
そして、左義長祭の当日、お手製の飾りを竹に飾りつけ、広場に積み上げていきます。当日、公民館では、自治会と子供達が中心となり儀式を行なった後、飾り付けた竹を持って瀛津島神社へと上がります。
瀛津島神社へ上がると、子供達は、ゆっくりと数回境内を回って神社を下り、左義長に火を入れる広場へと向かいます。
以前は、元服する男子が瀛津島神社から下る際、行かせまいと青年団が邪魔をするなどして小競り合いをしました。神社の階段がとても急なため、島民はハラハラしながら見守ったものです広場へ到着すると、いよいよ五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて、左義長に火が入れられます。その火を囲み、火が消えるまで島民の談笑が続きます。 “すごもろこ”豊漁
“すごもろこ”とは、もろこの一種で一年通して獲れる湖魚ですが、この時期(秋〜冬)は沖曳網漁で獲ります。
“すごもろこ”は、放流、養殖など人工的に繁殖をさせるようなことはされておらず、近年は昔に比べ漁獲量が減っていますが、今年は例年に比べ、豊漁です。これは自然繁殖によるものと考えられますが、詳しい理由は解っていません。
漁協婦人部“湖島婦貴の会”では、沖島で水揚げされた“すごもろこ”を若煮にして販売(漁協会館前)しています。例年は漁獲漁が少ないため高値で取引されますが、豊漁で値段も手頃なため、お買い求めやすくなっております。沖島にお越しの際は、ぜひ、一度ご賞味下さいませ。
※ 通信販売も行っています。詳しくは、『沖島“家庭の味”宅配便』をご覧ください。
〜〜ここからは例年の冬の沖島の様子をご紹介しています〜〜
《差義長祭り》◇ 左義長祭り
左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として、毎年1月15日(現在は、それに近い日曜日)に行われます。
このお祭りは五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて、大火で奉納される儀式です。
“左義長”は、大きいものを中学3年の子が、小さいものを小学6年の子が担ぎます。昔から島民皆が参加する島の楽しみの一つです。◇ 獅子舞
島の年中行事の一つで、島の男子は、元服を済ませた翌年18才になると“獅子舞若連中”といい、伊勢大神楽講社の一行を迎えて、島中一軒一軒の“カマド払い”をします。
この獅子舞は、鎮火守護の祈りの行事として古くから伝えられ、毎年2月から3月に行われます。午前中は各家庭を回ってお払いをしていただき、午後からは広場で獅子舞、余興が行われます。
その見物に欠かせないのが“サト豆”というあられを砂糖で固めたお菓子です。「獅子舞の豆を食わんと良い日が来ん(春らしい日が来ない)」といわれ、今でも続く行事です。
現在では、獅子舞若連中ではなく、決められた人が一行の送迎を行っています。
《獅子舞・余興の様子》
沖島の冬の味覚といえば、“わかさぎ”です。漁は8月下旬ころから始まりますが、冬の時期には、10〜15pほどの大きさに成長した子持ちのわかさぎが獲れます。
“わかさぎ”は骨が柔らかい湖魚で、天ぷら、南蛮漬けなどの料理に適し、また、この時期のものは子持ちなので“一夜干し”も大変美味です。
また、この寒い時期を利用して、“お漬物”、“かきもち”などの保存食を作ります。お漬物作りは、ほとんどの家庭で行われているお正月前の年中行事のようなもので、自前の畑で採れた野菜を使って漬けます。
ここでは、“わかさぎの一夜干し”、“かきもち”、また年中食べられていますが、おせち料理の一品としても作られる“えび豆”をご紹介いたします。◇ わかさぎの一夜干し
“わかさぎの一夜干し”は、塩水(水の量に対し1%の塩)にお酒を適量入れ、洗ったわかさぎを、そのまま3時間程度漬け、漬けたものを一晩、軒下等に陰干しにして作ります。
一夜干しのわかさぎは、火が通る程度まで焼いて頂きます。海の干物とは、ひと味違う格別な味わいです。
“わかさぎの一夜干し”は、なんといっても、わかさぎの鮮度が命です。獲れたての“わかさぎ”が手に入る沖島ならではの逸品です。
《わかさぎの一夜干し》◇ えび豆
“えび豆”は、スジエビの代表的な料理で、日常的に作られますが、「腰が曲がるまでマメに暮らせますように・・・」と、おめでたい時やおせち料理のひと品としても、よく作られています。
味・作り方は、各家庭で少しずつ違いがありますが、味は甘辛く、エビ豆の作り方の特徴として、大豆は柔らかく茹でたものを加え、エビがあまり硬くならないように短時間で炊き上げます。
※ “えび豆”は通販でお買い求めいただけます。
詳しくはこちらへ・・・◇ かきもち
“かきもち”は、昔から沖島の家庭で作られている保存食のひとつです。
お餅をつくときに海苔、黒砂糖など入れて味付けし、切れる程度に四角く固めた餅を薄く(2〜3o程度)切り、藁で編んで吊るして、3ヶ月くらい部屋の中で干します。“かきもち編み”といわれ、どの家庭でも見られた光景です。
作り方が餅つき機を使ったり、味付けをエビマヨ味(干しえびとマヨネーズ)にしたりと、昔とは少し変わりましたが、今でも多くの家庭で作られています。