“島の細い道を瀛津島神社へ上がる子供達”
H25年冬
沖島の冬は、寒さが厳しく、天候によって漁に出る日も少なくなります。 厳しい季節のなかで、島民は左義長祭り、獅子舞などの行事で一年の息災を祈り、また先人の知恵をかり保存食を作ったりして、暖かな春を待ちます。 |
今年も、沖島に寒さ厳しい冬がやってまいりました。今年は例年に比べ天候が不順で湖が荒れることが多く、漁に出られない日も多くなっています。
そんな静かな冬を迎えている沖島から今年の話題をいくつかご紹介いたします。
冬の虹…早く帰るぞ〜!
今年、沖島周辺では綺麗な“虹”をよく目にします。“虹”は一般的に良いイメージを抱かれることが多いと思いますが、沖島では昔から「虹が出たら湖から早く上がれ、漁には出るな!」と言い伝えられ、琵琶湖の漁師にとっては“湖が荒れるぞ〜!”という悪い知らせでもあります。今年は、やはり天候が不順なようです。
“コアユ”平年並みの水揚げに…♪
『秋の沖島』のページで話題に取り上げた“コアユ”ですが、何処からか戻って来たのでしょうか…冬になって、なんとか平年並みの水揚げがありました。もともと1月から3月にかけては水揚げが少ないのですが、平年並みに獲れて、ひと安心といったところです。
あの夏以降、コアユが姿を消していたことは未だ謎ですが、このまま春の最盛期を迎えられることを願うばかりです。
すごもろこ、はす、えび漁は順調!
“すごもろこ漁”,“はす漁”,“えび漁”は、今年も順調です。
“すごもろこ”は、あまり知られていない湖魚だと思いますが、本もろこと同様に琵琶湖の固有種です。本もろこに比べ、小ぶりで、ほっそりしています。一時期は本もろこと同じように水揚げが減りましたが、琵琶湖の環境が良くなってきたためか、水揚げが増加しています。
“はす”は、この時期のものは小ぶりで骨も比較的柔らかく、南蛮酢づけ、若煮などでいただきます。
※「すごもろこ若煮」「はす南蛮酢漬け」「えび豆」は漁協婦人部の屋台(漁協会館前)または通販でお買求めいただけます。
わかさぎ・・・昨年に引き続き不漁
今年も昨年に引き続き、“わかさぎ漁”は水揚げが少なめです。
琵琶湖のわかさぎは、冬に最盛期を迎え、体長が10〜15pほどになった子持ちのわかさぎも獲れます。
南蛮漬けや天ぷら、若煮のほか、沖島では“一夜干し”にしたりして、いただきます。
まさに、冬の沖島を代表する味覚ですが、今年は少し貴重なものとなりそうです。
お知らせ
◇ 沖島漁協−夏のイベント“ふなずし手作り講習会”
毎年、ご好評をいただいております『ふなずし手作り講習会』を今年(H25年)の夏も開催いたします。
昨年同様、7月からの開催を予定しております。詳細は決まり次第、ホームページ等でご案内いたします。
なお、講習会の予約についてのお問合せも受け付けております。お気軽にお問合せ下さいませ。
◇ 沖島の冬の風物詩 “獅子舞”
沖島の冬の風物詩としてご紹介している“獅子舞”が、今年は2月24日(日)に行われる予定です。
“獅子舞”は、古くから伝わる沖島の年中行事のひとつで、各家庭を廻った後、漁港近くの広場で余興が
行われます。(詳しい内容は、下記の『冬の風物詩』のコーナーでご紹介しています。)
ぜひ、この機会に沖島へ足を運んでみませんか♪
〜〜ここからは例年の冬の沖島の様子をご紹介しています〜〜
沖島の左義長祭り
沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われています。
元服とは、かつての武士階級で、男子なら十三才から十七才までの間に行われる、今で言う成人式のような儀式で「加冠の儀」といい、それが済むと大人の仲間入りをし、一人前の武士として出陣する資格を得たそうです。
沖島の左義長祭りは、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。
今では、元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて島民皆が参加するお祭、島の楽しみの一つとなっています。年が明けると島全体で左義長祭りの準備が始まります。飾り付けをする竹を島民皆で集め、飾りの準備をします。男の子のいる家庭では“ 吉書 さん”、女の子のいる家庭では“だんぷくろ”という飾りを作ります。この“だんぶくろ”は沖島ならではと言われており、「お裁縫が上手になりますように…」との願いを込めて一針一針、色紙を縫い合わせて作ります。
そして、左義長祭の当日、お手製の飾りを竹に飾りつけ、広場に積み上げていきます。当日、公民館では、自治会と子供達が中心となり儀式を行なった後、飾り付けた竹を持って瀛津島神社へと上がります。
瀛津島神社へ上がると、子供達は、ゆっくりと数回境内を回って神社を下り、左義長に火を入れる広場へと向かいます。
以前は、元服する男子が瀛津島神社から下る際、行かせまいと青年団が邪魔をするなどして小競り合いをしました。神社の階段がとても急なため、島民はハラハラしながら見守ったものです。広場へ到着すると、いよいよ五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて、左義長に火が入れられます。その火を囲み、火が消えるまで島民の談笑が続きます。
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獅子舞
島の年中行事の一つで、島の男子は、元服を済ませた翌年18才になると“獅子舞若連中”といい、伊勢大神楽講社の一行を迎えて、島中一軒一軒の“カマド払い”をします。
この獅子舞は、鎮火守護の祈りの行事として古くから伝えられ、毎年2月から3月に行われます。午前中は各家庭を回ってお払いをしていただき、午後からは広場で獅子舞、余興が行われます。
その見物に欠かせないのが“サト豆”というあられを砂糖で固めたお菓子です。「獅子舞の豆を食わんと良い日が来ん(春らしい日が来ない)」といわれ、今でも続く行事です。
現在では、獅子舞若連中ではなく、決められた人が一行の送迎を行っています。
沖島の冬の味覚といえば、“わかさぎ”です。漁は8月下旬ころから始まりますが、冬の時期には、10〜15pほどの大きさに成長した子持ちのわかさぎが獲れます。
“わかさぎ”は骨が柔らかい湖魚で、天ぷら、南蛮漬けなどの料理に適し、また、この時期のものは子持ちなので“一夜干し”も大変美味です。
また、この寒い時期を利用して、“お漬物”、“かきもち”などの保存食を作ります。お漬物作りは、ほとんどの家庭で行われているお正月前の年中行事のようなもので、自前の畑で採れた野菜を使って漬けます。
ここでは、“わかさぎの一夜干し”、“かきもち”、また年中食べられていますが、おせち料理の一品としても作られる“えび豆”をご紹介いたします。◇ わかさぎの一夜干し
“わかさぎの一夜干し”は、塩水(水の量に対し1%の塩)にお酒を適量入れ、洗ったわかさぎを、そのまま3時間程度漬け、漬けたものを一晩、軒下等に陰干しにして作ります。
一夜干しのわかさぎは、火が通る程度まで焼いて頂きます。海の干物とは、ひと味違う格別な味わいです。
“わかさぎの一夜干し”は、なんといっても、わかさぎの鮮度が命です。獲れたての“わかさぎ”が手に入る沖島ならではの逸品です。
《わかさぎの一夜干し》◇ えび豆
“えび豆”は、スジエビの代表的な料理で、日常的に作られますが、「腰が曲がるまでマメに暮らせますように・・・」と、おめでたい時やおせち料理のひと品としても、よく作られています。
味・作り方は、各家庭で少しずつ違いがありますが、味は甘辛く、エビ豆の作り方の特徴として、大豆は柔らかく茹でたものを加え、エビがあまり硬くならないように短時間で炊き上げます。
※ “えび豆”は通販でお買い求めいただけます。
詳しくはこちらへ・・・◇ かきもち
“かきもち”は、昔から沖島の家庭で作られている保存食のひとつです。
お餅をつくときに海苔、黒砂糖など入れて味付けし、切れる程度に四角く固めた餅を薄く(2〜3o程度)切り、藁で編んで吊るして、3ヶ月くらい部屋の中で干します。“かきもち編み”といわれ、どの家庭でも見られた光景です。
作り方が餅つき機を使ったり、味付けをエビマヨ味(干しえびとマヨネーズ)にしたりと、昔とは少し変わりましたが、今でも多くの家庭で作られています。