“冬”の沖島   H26年冬
  沖島の冬は、寒さが厳しく、天候によって漁に出る日も少なくなります。
 厳しい季節のなかで、島民は
左義長祭り、獅子舞などの行事で一年の息災を祈り、また先人の知恵をかり保存食を作ったりして、暖かな春を待ちます。  


平成26年・冬の話題

 
今年も、沖島に静かな冬がやってまいりました。今年は11月後半から寒くなり、寒さに震える日が続くかと思うと日差しの暖かな日があるなど、寒暖の差が激しい冬のようです。
 暖かい日があるたび、桜のつぼみが少しずつ膨らむ様子を眺めながら、“今年は春の到来が早いのでは…♪”という期待も膨らみます。
 そんな冬を迎えている沖島から今年の話題をいくつかご紹介いたします。
 1月12日 沖島左義長まつり

 今年も1月12日(日)、沖島で左義長祭りが行われました。例年は雪の日が多いのですが、今年は雪も無く暖かな日となりました。

※撮影日2011.1.17 
 お祭りは、昔から伝わるように男の子のいる家庭では“吉書(きっしょ)さん”、女の子のいる家庭では“だんぶくろ”という飾りを作り、例年通り厳かに行われました。お祭りの様子は『冬の風物詩』のコーナーで詳しく御紹介しております。
 また、最近は島外から沖島の左義長を見に来られる方が増え、「今年の差義長はいつですか?」とお問合せもいただくこともあります。
 こうして、受け継がれてきた伝統に触れていただくことで、今も昔も変わらない沖島の風情を感じていただければと思います。
 また、島の活性化を目指し新しい取組みをしながらも、受け継がれてきた古き良きもの(伝統)”は大切に伝えて行きたいと思います。

 “イサザ漁”秋から引き続き好調♪

 『秋の沖島』のページで話題に取り上げた“イサザ漁”は、豊漁が続いています。秋に水揚げされたものに比べ、大きさは大きくなってきましたが、それほど骨などの硬さは気になりません。
 “イサザ”は主に若煮にしていただきますが、寒い日には温まる『イサザのじゅんじゅん』も絶品です。『じゅんじゅん』とは、この地方で言う“すき焼き”のことで、肉のかわりに“イサザ”を入れます。食べ方も一般的なすき焼きと同様、溶き卵にからめたりしていただきます。この冬ならではの味わいです。

“えび豆”
 その他エビ漁も順調ですが、本モロコは昨年よりやや少なめで、その分子持ちとなる3〜4月に期待がかかります。

“わかさぎ南蛮漬け”
 また、琵琶湖の冬を代表する“わかさぎ”は、体長が10〜15pほどになった子持ちのわかさぎも獲れますが、今年も昨年に引き続き、水揚げが少なめです。沖島では、南蛮漬けや天ぷら、若煮のほか“一夜干し”にしたりしていただきます。今年も少し貴重な冬の味覚となりそうです。
※「イサザ若煮」「わかさぎ南蛮漬け」「えび豆」は漁協婦人部の屋台(漁協会館前)または通販でお買求めいただけます。

 『離島振興法』に関する漁協の取り組み

 『夏の沖島の』のページで取り上げました『離島振興法』の適用に伴い、今年度の夏から“沖島21世紀夢プラン”の実現に向け、会を発足し提案事項をまとめるなどの取組みが進んでいます。
 沖島漁協としては、“獲るだけの漁業から湖魚の付加価値を高める漁業へ”をコンセプトに提案事項を検討しています。例えば、獲れたての湖魚を活用した観光事業、それに伴う観光施設等の充実化、沖島漁港の桟橋老朽化による架け替えなどが挙げられています。詳細は「沖島漁協の概要」のページでご紹介していく予定(作成中)です。


 お知らせ

◇ “塩切り鮒”の予約販売開始!
 毎年、ご好評をいただいております「塩切り鮒の予約販売」を開始致しました。
 ご家庭で手軽に“ふなずし作り”を楽しんでいただけるよう、ふなずし作りの工程で最も手間のかかる塩切り(塩漬け)までしてありますので、後は夏の土用の頃(9月頃まで可能)に漬け込みしていただけば、年末年始頃には美味しい“ふなずし”を楽しんでいただけます。詳しくは「塩切り鮒の予約販売」のページをご覧下さい。

◇ 沖島漁協−夏のイベント“ふなずし手作り講習会”開催
 毎年、ご好評をいただいております『ふなずし手作り講習会』を今年(H26年)の夏も開催いたします。
 昨年同様、7月からの開催を予定しております。また、今年から新プランとして“宿泊付きプラン”も検討しております。詳細は決まり次第、ホームページ等でご案内いたします。
 なお、講習会の予約についてのお問合せも受け付けております。お気軽にお問合せ下さいませ。

◇ 沖島の冬の風物詩 “獅子舞”
 沖島の冬の風物詩としてご紹介している“獅子舞”が、今年は
2月23日(日)に行われる予定(雨天等順延3月2日の予定)です。
“獅子舞”は、古くから伝わる沖島の年中行事のひとつで、各家庭を廻った後、漁港近くの広場で余興が行われます。(詳しい内容は、下記の『冬の風物詩』のコーナーでご紹介しています。)
 ぜひ、この機会に沖島へ足を運んでみませんか♪

冬の風物詩 〜〜ここからは例年の冬の沖島の様子をご紹介しています〜〜

 沖島の左義長祭り

 沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われています。
 元服とは、かつての武士階級で、男子なら十三才から十七才までの間に行われる、今で言う成人式のような儀式で「加冠の儀」といい、それが済むと大人の仲間入りをし、一人前の武士として出陣する資格を得たそうです。
 沖島の左義長祭りは、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。
 今では、元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて島民皆が参加するお祭、島の楽しみの一つとなっています。
“だんぶくろ”飾り

 年が明けると島全体で左義長祭りの準備が始まります。飾り付けをする竹を島民皆で集め、飾りの準備をします。男の子のいる家庭では吉書(きっしょ)さん”、女の子のいる家庭では“だんぷくろ”という飾りを作ります。この“だんぶくろ”は沖島ならではと言われており、「お裁縫が上手になりますように…」との願いを込めて一針一針、色紙を縫い合わせて作ります。
 そして、左義長祭の当日、お手製の飾りを竹に飾りつけ、広場に積み上げていきます。
    “飾り付けされた竹”


  “広場に積み上げられた竹”

“家族で飾付けをする島民”                   
  当日、公民館では、自治会と子供達が中心となり儀式を行なった後、飾り付けた竹を持って瀛津島神社へと上がります。
 瀛津島神社へ上がると、子供達は、ゆっくりと数回境内を回って神社を下り、左義長に火を入れる広場へと向かいます。
 以前は、元服する男子が瀛津島神社から下る際、行かせまいと青年団が邪魔をするなどして小競り合いをしました。神社の階段がとても急なため、島民はハラハラしながら見守ったものです。

“島の細い道を瀛津島神社へ
上がる子供達”


 “神社の境内を回る子供達”


 “広場へと向かう子供達”
 広場へ到着すると、いよいよ五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて、左義長に火が入れられます。その火を囲み、火が消えるまで島民の談笑が続きます。


“火を起こし左義長に火を入れます”
 
 “勢いよく燃え上がる左義長”
 獅子舞 

 島の年中行事の一つで、島の男子は、元服を済ませた翌年18才になると“獅子舞若連中”といい、伊勢大神楽講社の一行を迎えて、島中一軒一軒の“カマド払い”をします。
 この獅子舞は、鎮火守護の祈りの行事として古くから伝えられ、毎年2月から3月に行われます。午前中は各家庭を回ってお払いをしていただき、午後からは広場で獅子舞、余興が行われます。
 その見物に欠かせないのが“サト豆”というあられを砂糖で固めたお菓子です。「獅子舞の豆を食わんと良い日が来ん(春らしい日が来ない)」といわれ、今でも続く行事です。
 現在では、獅子舞若連中ではなく、決められた人が一行の送迎を行っています。

  
冬の味覚

 沖島の冬の味覚といえば、“わかさぎ”です。漁は8月下旬ころから始まりますが、冬の時期には、10〜15pほどの大きさに成長した子持ちのわかさぎが獲れます。
“わかさぎ”は骨が柔らかい湖魚で、天ぷら、南蛮漬けなどの料理に適し、また、この時期のものは子持ちなので“一夜干し”も大変美味です。
 また、この寒い時期を利用して、“お漬物”、“かきもち”などの保存食を作ります。お漬物作りは、ほとんどの家庭で行われているお正月前の年中行事のようなもので、自前の畑で採れた野菜を使って漬けます。
 ここでは、“わかさぎの一夜干し”“かきもち”、また年中食べられていますが、おせち料理の一品としても作られる“えび豆”をご紹介いたします。
◇ わかさぎの一夜干し
 
“わかさぎの一夜干し”は、塩水(水の量に対し1%の塩)にお酒を適量入れ、洗ったわかさぎを、そのまま3時間程度漬け、漬けたものを一晩、軒下等に陰干しにして作ります。
 一夜干しのわかさぎは、火が通る程度まで焼いて頂きます。海の干物とは、ひと味違う格別な味わいです。
 “わかさぎの一夜干し”は、なんといっても、わかさぎの鮮度が命です。獲れたての“わかさぎ”が手に入る沖島ならではの逸品です。

         《わかさぎの一夜干し》
◇ えび豆

  “えび豆”は、スジエビの代表的な料理で、日常的に作られますが、「腰が曲がるまでマメに暮らせますように・・・」と、おめでたい時やおせち料理のひと品としても、よく作られています。
 味・作り方は、各家庭で少しずつ違いがありますが、味は甘辛く、エビ豆の作り方の特徴として、大豆は柔らかく茹でたものを加え、エビがあまり硬くならないように短時間で炊き上げます。 

  ※ “えび豆”は通販でお買い求めいただけます。
     詳しくはこちらへ・・・
◇ かきもち

 “かきもち”は、昔から沖島の家庭で作られている保存食のひとつです。
 お餅をつくときに海苔、黒砂糖など入れて味付けし、切れる程度に四角く固めた餅を薄く(2〜3o程度)切り、藁で編んで吊るして、3ヶ月くらい部屋の中で干します。“かきもち編み”といわれ、どの家庭でも見られた光景です。
 作り方が餅つき機を使ったり、味付けをエビマヨ味(干しえびとマヨネーズ)にしたりと、昔とは少し変わりましたが、今でも多くの家庭で作られています。

《参考文献》
・ 「沖島物語」 西居正吉 著


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