夏の沖島    2019年度・夏 
 春、見事に満開の姿をみせてくれた桜も、夏空に映える青々とした葉を茂らせ、漁港にはカラフルな色に染められた漁網が沖島の夏到来を告げています。
 しかしながら、今年の夏はいつもとちょっと違うような?感じがします。毎年恒例となりました「ふなずし手作り講習会」も例年は厳しい暑さの中開催されることが多いのですが、今年は比較的過ごしやすい気候のなか、行われました。
 そんななか、夏本番を告げる“うろり漁”も始まり、沖島もいよいよ夏本番となりそうです。そんな沖島からこの夏の話題をお届けします♪
 
令和元年・夏の話題
 
 今年も大盛況♪ 『ふなずし手作り講習会』

 今年も御好評をいただいております『ふなずし手作り講習会』を琵琶湖汽船との共同企画で、7月8・10・12・14・16・18日に開催致しました。例年は厳しい暑さの中での開催が多く業務用扇風機フル回転の中、漬込み作業をしていただきますが、今年は厳しい暑さもなく、また最終日以外は雨に降られることもなく比較的過ごしやすい気候のなかでの開催となりました。
 また、今年の「春の沖島」の話題としてもご紹介させていただきましたように、今年も昨年ほどではないものの、講習会用の塩切り鮒が充分に確保できるか懸念されておりましたが、鮒のサイズの許容範囲を広げるなどしたものの、鮒自体は卵の持ち方が最高レベルのものが確保でき、なんとか6回の講習会を開催させていただくことができました。しかしながら、お申込み多数につき、御希望に添えず多くの方々にご了承いただくこととなりましたこと、改めてお詫び申し上げます。

“丁寧な講習を心がけています”
 今年の講習会は、約7割の方がリピーターとして参加され、手つきの慣れた方々も多く、初めての方にお声かけして下さる方なども見え、各回とも大変和やかな雰囲気のなか講習会を進めさせていただくことができました。また、受講された方々は関西方面からお越しいただいている方が多いのですが、中には関東方面からお越しいただいている方もみえ、関東方面の方にも感心を持っていただけたことを嬉しく思うとともに、この取り組みが毎年少しずつではありますが、広まりをみせていることを実感させていただきました。
 講習会の内容は、毎回10:20頃より始まり、午前中は塩切り鮒を洗い(磨き)、吊るし干しする作業をしていただきます。乾かしている間、昼食をとっていただき、午後(13:30)から漬け込み作業をしていただきます。

“塩切り鮒の磨き作業”

“磨いた鮒を丁寧に洗います”

“水気を拭いて干します”
“鮒を乾かしている間の昼食タイム”
“樽にビニール袋をセットします”

“一匹ずつご飯を詰めます”

 昼食タイムには、沖島の味満載の“沖島定食(ビワマスの刺身・ビワマスのアラ汁付き)”(要予約)の他、焼きたての“本もろこの素焼き
(有料)”や冷えたビール(有料)などをご賞味いただきました。

“昼食タイムの沖島定食”

“本もろこの素焼き”
今年は昨年までとは少し趣向を変え、“ブラックバスのフライ”をご賞味いただきました。琵琶湖固有種の天敵と言われる外来魚「ブラックバス」ですが、実は食材としての栄養化は高く、適切な下処理を行えば臭みもなく白身のお魚として美味しくいただけます。沖島漁協が“未来への取り組み”の一つとして推進している「外来魚の活用事業」の一環である“沖島よそものコロッケ”の原材料にもなっています。

 鮒ずしを漬け込んだ樽は、お持ち帰りしていただくか、または漁協にて保管(有料)させていただきます。保管させていただいた樽は、食べ頃になった頃に樽から鮒ずしを取り出し、真空パックにしたものをダンボールに入れてご自宅へお送り致しております。鮒ずしは発酵食品ですので少しずつ発酵が進みますが、真空パックで冷凍保存していただけば、食べ頃の状態のまま長期保存ができます。年々、漁協での保管を希望される方も増えており、より手軽に鮒ずし作りを楽しんでいただけるのではないでしょうか♪

 『ふなずし手作り講習会』は今年で11年目の開催となり、夏のイベントとしてご好評をいただいている一方、毎年、受付日に電話が殺到し、多くの方々にお申込みいただいたにもかかわらず、ご希望に添えずご了承いただく状況が続いているなどの課題もあります。お申込み方法(お申込み先:琵琶湖汽船)に関しましては先着順ではなく「抽選方式」にすることで受付日初日の電話集中を無くし、より多くの方が公平にお申込みいただけるよう改善していきたいと思います。開催回数などに関しましては、講習会の質の保持を第一に考えると、場所・設備の問題および島民の高齢化などにより開催要員の増員が難しくなってきていることから、回数を増やすことは難しいのが現状です。しかしながら、この講習会を通して、この琵琶湖の伝統と恵みを次世代に引き継ぐ担い手として少しずつでも貢献できるよう、模索してまいりたいと思います。


 “夏の漁”全般的に好調です♪


“うろりの若煮”
 今年の沖島の梅雨は例年より雨量が少なく、琵琶湖の水位もあまり上がらないまま夏を迎え、夏の漁も始まりました。
 今年は春から好調の“小アユ漁”が引き続き好調で、“すくい網漁”ではサイズの大きいものがたくさん獲れています。しかしながら、皮肉なことにサイズの大きなものは需要が少なく安値となってしまうため、獲るサイズの調整ができる“小糸漁”のほうが多く行われています。
 夏に本番を迎える“ビワマス漁”も好調で、“ホンモロコ”、“スジエビ”などもよく獲れています。特に“ホンモロコ”、“小アユ”は太ったものが多いことから、琵琶湖全般に餌となるプランクトンが多い状態であり、現在の琵琶湖の環境が固有種にとって良い環境になっていると思われます。この状態は、昨年の夏、猛威をふるった台風の影響で琵琶湖が攪拌され、上層部と下層部が入れ替わったことによるのでは…と推測されます。
 しかしながら、7月20日から解禁となった“ウロリ漁”は今のところ、ほとんど水揚げがありません。“ウロリ漁”は、長年培った漁の経験値などから群れがいそうなところを狙って網を入れるのですが、獲れた “ウロリ”は、とても小さいものが多いことから、ふ化したばかりでまだ群れを成していないのではないかと思われます。また、5月から7月前半にかけて、エビたつべ漁の「たつべ」の中に卵を抱えたウロリの親魚が多く入ってきていましたが、7月後半頃より、突然見かけなくなったことから、どこかで産卵を終えているのではないか…と思われます。
 このようなことから推測するに、今、ウロリが獲れないのは、他にも推測される要因はありますが、ウロリ自体がいないからとは考えにくく、例年よりウロリの生育状況が遅れているためと判断するのが正しいのではないかと思います。そのように推測すると、ウロリが獲れるようになるのは、ウロリが成長し群れを成してくるお盆過ぎ頃からではないでしょうか。過去にも夏場に獲れず9月に入ってから豊漁になるという事例もありました。今年もそうなるよう、期待したいところです。


“ビワマスの刺身「琵琶湖のトロ」”
 このように、ほぼ全般的に漁の状況は良くなってきており、喜ばしいことではありますが、その一方で最近、淡水魚に対する需要が減ってきているように感じます。以前、「ビワマス」は“琵琶湖のトロ”と呼ばれ、夏に獲れる「ホンモロコ」は脂がのって美味なことから“夏もろこ”と呼ばれ需要も高いものでした。しかしながら、需要が減ってきている今、資源を増やすことも大切なことですが、それと同時に需要を高めていくことも肝要なことと考えます。そのためには琵琶湖の湖魚にもっと目を向けていただけるよう情報発信に努め、その魅力をより多くの方に知っていただけるよう、取り組んでいくことも重要だと思います。「湖魚の需要の高まり」が「より良い資源(湖魚)を増やす努力」につながり、そのためには「琵琶湖の環境改善・保全」に努めるというサイクルが、しいては母なる湖“琵琶湖”を守り、伝統を継承していくことにつながっていくのではないでしょうか。
 沖島漁協では、これまでにも『ふなずし手作り講習会』の開催や『沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”の湖魚料理(Kokocool MOTHERLAKE SELECTION 2017”に選定)などの島内販売や通信販売、またイベントなどでの販売を行ってきておりますが、これからも琵琶湖の恵み(湖魚)の魅力をより多くの方にお伝えできるよう取り組んで参りたいと思います。

※ 沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”および湖魚料理の通信販売については、『沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”』および『沖島“家庭の味”宅配便』をご覧ください。



 沖島の新名所・・・その後は?

 昨年の「夏の沖島の話題」でご紹介いたしました漁協会館近くの空き地に滋賀県立大学の建築学部のみなさんが制作して下さってた“休憩所”は、ドーム型に流木が組まれ、シートで雨風をしのげるようになり、中にはベンチなどが置かれて、ちょっとした休憩をしていただくことができるようになりました。
 今年の春の“桜まつり”の時には、“休憩所”内でお弁当などを召し上がる方々もお見えになるなど、沖島にお越しいただいた方々に利用していただいております。
 学生の皆さんが「環境に配慮する」という精神のもとに流木のみを使用して製作して下さっています。私どももその精神を受け継ぎ、“沖島の新名所”として大切にしていきたいと思います。

  

 沖島の夏は、初夏の頃から、ビワマス、ウナギ漁が始まり、7月に入ってウロリ漁も最盛期を迎えると、いよいよ夏本番です。  
“カラフルな漁網”
 漁網の手入れは日々行いますが、漁網の染色は、夏の暑い時期に行います。夏の日差しが染色した漁網をよく乾かしてくれるからです。
 最近は、カラフルな色に染め上げるのが流行で、港のあちらこちらに漁網のカラフルな花が咲きます。夏到来を告げる風景のひとつです。

 
“ふな寿司の漬け込み”
 夏の土用の暑い日に鮒寿司の漬け込みをします。春に卵を抱えた“ニゴロブナ”をウロコと内臓を取って塩漬けしておいたものを、いよいよ米飯で漬け込むのです。
 夏の土用の頃に行うのは、ふな寿司は最初に発酵を進めることが重要で、この夏の暑さが最適だからです。
 こうして、漬け込まれたふな寿司は、11月下旬〜年末年始にかけて食べ頃を迎えます。

 今年も“ふな寿司の手作り講習会”を行いました。写真をクリックすると講習会(H21年度開催)の様子が御覧いただけます。
“ここをクリック” 
      《桶に漬け込まれていくふな寿司》
  写真をクリックして下さい

夏ならではの味  

  “ウロリの若煮(佃煮)”&“ウロリの釜揚げ”
 夏に漁の最盛期を迎える“ウロリ”は、“ゴリ(ヨシノボリの稚魚)”のことで、この辺りでは“ウロリ”と呼びます。成魚になっても1.5cmくらいのそうめんのように細く白い小魚です。
 “ウロリの若煮”は、沖島で水揚げされたウロリを昔から沖島の漁師の家庭に受け継がれている炊き方で炊き上げたものです。佃煮より短時間で炊き上げるので、柔らかく、また水飴等も使わないので、甘辛くてもあっさりとした味に仕上がります。
暑くて食が進まない時にも、ご飯が進む一品です。
 “ウロリの釜揚げ”は、ウロリが新鮮なうち(水揚げされて1時間以内)に釜揚げにしていただきます。ウロリは鮮度が落ちるのが早く、まさに漁の最盛期を迎える夏にしか味わえない一品です。
※“ウロリの若煮”は漁協婦人部湖島婦貴の会の屋台(漁協会館前)で販売中です
“うなぎの蒲焼き・白焼き” 
 琵琶湖産天然うなぎは、特大サイズのものが多く、肉厚で脂がとても良くのっています。夏のこの時期は、蒲焼き・白焼きが絶品です。
 特に白焼きは、うなぎ本来の味を楽しむことができます。また、ポン酢・生姜醤油で味わうのも、さっぱりしていて暑い夏にピッタリの一品です。


  
 《うなぎを炭火で焼いています》


         《ビワマスの刺身の調理例》

“ビワマスの刺身”
  初夏の頃から、ビワマスの漁が始まりますが、夏のビワマスは特に脂がのっています。
 この時期の新鮮なビワマスを、お刺身でいただくと“トロの刺身”といえるほどの味わいです。
“うなぎのじゅんじゅん”
 “じゅんじゅん”とは、この地方で言う“すき焼き”のことです。作り方は一般のすき焼きと同じですが、肉類等のかわりに“うなぎ”を入れます。食べ方も一般的なすき焼きと同様、溶き卵にからめたりして頂きます。
 また家庭では、写真のようにいろいろな具材を入れるのではなく、玉ねぎとうなぎだけですき焼き風にしたりもします。


 《うなぎのじゅんじゅんの調理例》

《参考文献》
「琵琶湖の幸 読本」 平成19年9月発行 滋賀県漁業協同組合

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