“春の沖島”
 令和5年度版

 厳しい冬が過ぎ、小アユ漁やフナ漁が始まると、
“沖島の春”到来です。
 沖島の春は、島の所どころに桜が咲き、山では“蕨”“筍”“よもぎ”などの山菜も採れたり・・・とのんびりとした懐かしい春の風景に出逢えます。
 令和5年・春の話題

 暖かな春の到来とともに新年度がスタート致しました。この春は「おきしま資料館のリニューアルオープン」や「漁協会館 建替え(リフォーム)計画の予算取りに向けての要望書の提出」など、新たな始まりを感じさせる出来事があり、新たな始まりを実感する春を迎えています。
 全国的にも春の到来が早かったように、沖島でも寒暖差は大きいものの4月上旬に20℃を超えるような日もあるなど、例年に比べ春の到来が早かったように思います。それとともに今年は桜の開花も早く、昨年より1週間以上早い開花となりました。例年は沖島小学校の入学式(8日頃)を迎える頃、見頃となることが多いのですが、今年は4月1、2日頃には満開となり、毎年4月1日に開催される「老人会総会」では、このような満開の桜のもとで行われることは今までなかったなぁ・・・と話題になるほどでした。この開花の早さは観測データ上でも史上2番目の早さだったそうです。
 そんな春の到来とともに島を訪れる観光客の方々も多くなり、桜が満開になる頃には大変多くの方々にお越しいただきました。活気にあふれる島の様子にも新たな始まりを実感させていただく春となっています。そんな春を迎えた沖島からいくつかの話題をお届け致します♪


 ◆ 春の漁 全般的に順調ですが“小アユ漁”は危機的な状況です
 今年も“琵琶湖の深呼吸”と言われる『全層循環』も3年連続で確認されるなど、冬から引き続き、琵琶湖の環境も全般的に安定している状況の中、春の漁を迎えました。

“ニゴロブナ”
 2月下旬頃から始まった“ニゴロブナ漁”は今年も順調に獲れ、毎年恒例となりました「鮒ずし手作り講習会」や「塩切り鮒予約販売」に必要な量も早い時期に確保することができました。魚のサイズや状態は、卵をたっぷりはらんで大きさも揃ってるものが多く、成長の良さを感じさせます。しかしながら、その形(魚の形)は昔と変わってきているのでは・・・という声が聞かれるようになっています。そのような声は漁師以外からも聞かれるようになりました。その要因として考えられるのは「人工ふ化」によるものではないか…ということです。天然(自然)のふ化ではなく、「人工ふ化」という人の手が加えられたことにより何かしらの影響が出ているのではないかと思うからです。最近、資源(湖魚)の量的には確実に回復してきており、これは「人工ふ化」による稚魚の放流量の増加と琵琶湖の環境の安定化により稚魚から成魚になる確率が高くなってきているためと思われます。しかしながら「天然ふ化」の割合は伸びてきておらず、長年、漁を営み、昔のニゴロブナを知っている漁師としては資源回復したと実感できない面もあり、「真の資源回復」とは言えないのではないでしょうか。
 一方、同じように「人工ふ化」による稚魚の放流が行われている“ホンモロコ漁”も引き続き豊漁が続いています。この状況は確実に資源が回復してきていることを示しておりデータ的にも確認されています。このことは放流事業が功を奏していることもあるのですが、ニゴロブナとの大きな違いは「天然ふ化」の割合も増加してきていることです。これこそ、「真の資源回復」だと言えるのではないでしょうか。

“イサザ”
 その他、今年は“イサザ漁”が近年に例がないほどの豊漁となりました。“イサザ”は琵琶湖の固有種で、姿は下あごが上あごより出ていて成魚は全長5〜8cmくらいになり、海水魚のハゼに似た湖魚です。近年では年々漁が減少し、7〜8年くらいの周期で漁獲量が変動し、獲れ始めた年から2年くらいで再び姿を消してしまうことから“幻の湖魚”とも言われてきましたが、ここ数年は姿を消すことなく水揚げされています。今年はその例年の10〜20倍の水揚げがあり、この時期は産卵のために岸に寄ってくるため、えり漁(小型定置網)の網に600〜700sも入っている日もありました。

“スジエビ”
 また、“スジエビ漁”ですが、昨年の春は全盛期を思わせるほどの水揚げとなりましたが、今年は獲れてはいるものの、そこまでの水揚げにはなっていない状況です。この時期(4月下旬)はスジエビも産卵のために浅瀬に寄っていくので、今の漁法では獲りづらくなっていますが資源がいないということではありません。“スジエビ”の需要は好調で今も獲れれぱ獲れただけ買取される状況ですが、“スジエビ”はゴールデンウィークに最も需要が高くなるので、それまでにより多く漁獲をしストックを持っておきたいのですが今年はそこまでは難しいのが現状です。
 このように、この春の漁は全般的には順調であり、このことは琵琶湖の環境が引き続き安定していると感じる状況でもあります。しかしながら、何故か今年の“小アユ漁”は危機的な状況になっています。とにかく今年は獲れないのです。データ的にも平年の一割未満の漁獲量という報道もあります。
 この状況に水産試験場など公共機関も調査に乗り出し、魚群探知機などいろいろな調査方法を試みるも魚影を確認することができない状況にあり、群れを形成していないだけではなく資源的に存在するかどうかまで懸念が膨らんでいます。

“小アユ”
 過去にも同じように不漁になった年がありました。2017年のこと、216億粒の産卵があったにも関わらず、その年の漁獲量は極端に少なくなりました。琵琶湖のアユは例年9月頃産卵しますが、この年は川に水がなくて10月に産卵時期がずれ込み成長が遅れたため、漁が始まる時期に十分な成長が出来ていないことから、網目から抜けてしまい漁獲が出来なかったことが原因でした。
 今年は昨年の9月時点で68億粒の産卵が確認されており、2017年の216億粒に比べれば少ないものの例年の75%の産卵状況となっており、危機的な状況ではありません。現に早期のアユ漁となる昨年12月の“ヒウオ
(アユの稚魚)漁”は注文量に10日も経たずに到達し、早くに漁を終えました。このことは漁獲があったことを意味し、漁師、業者とも今年の小アユ漁はまずまずで心配ないと安堵するとともに、このような事態は想像もしていませんでした。
 では、この春の“小アユ漁”の危機的な状況は何故なのでしょうか・・・?
 アユの産卵は100億粒を超えるとうまく成長出来ないと言われています。これは水産試験場などの専門家により琵琶湖の環境において栄養状態、プランクトンの発生状況などを考慮に入れ総合的に勘案した結果、産卵が100億粒を超えると栄養不足に陥り、うまく成長できないという見解です。しかしながら、今年の産卵状況は68億粒と確認されており、この見解よりも少なく成長が心配されるような状況ではありません。実際にえり漁などに入ってきたものをみても、サイズ
(体長・体重)など成長の度合いも例年を上回っていることが確認でき、この見解にはあてはまらないと思われます。
 その他、推測できることとして「琵琶湖の環境の悪化」などの環境的なことが挙げられますが、「他の湖魚も成長が悪くやせている」とか「汚染物質による水質の悪化により大量の死骸が浮く」などの状況が見られれば、原因として考えられますが、この春の漁は“小アユ漁”以外は全般的に好調で、湖魚の死骸が浮いているようなことも見受けられないことから、原因としては考えにくいと思います。
 このように考えられる原因を挙げてみましたが、どれも原因としては考えにくく、ただ“獲れない”という現実だけが明らかとなっている状況です。
 琵琶湖の資源の状態を管轄している彦根の水産試験場では、このような事態を受け様々な方法で調査を行っていますが、魚群探知機には写らないため、資源の実態を何とか把握しよういうことで彦根の水産試験場にある港で夜間に照明を入れる試みをされました。その結果、結構な数の小アユが寄ってきたそうですが、どの個体もあまりに小さく「ヒウオ
(アユの稚魚)」を少し超えたぐらいの大きさしかなかったそうです。このことから、水産試験場は「現在の“小アユ漁”の状況は、資源(小アユ)としてはいるものの、小さすぎて漁獲ができない状況」という見解を出されました。
 現在の“小アユ漁”の危機的な状況について、このような見解は出されましたが私ども漁業従事者としては、少しでも魚群探知機に写っていれば希望はもてますが、写ってない以上、今年の小アユ漁は全く希望が持てないのでは…不安が募ってきております。

 ここまで、4月下旬までの漁の様子をご紹介してきましたが、5月に入ると沖引き漁が禁止されますことから、漁を切り替えていく頃ともなります。例年は、この頃(4月下旬)になるとニゴロブナやイサザ、ホンモロコなどは産卵のためにどんどん湖岸に寄っていくことから沖引き漁では獲れなくなります。一方、小アユはこの頃から島を出た通船の航路あたりで獲れるようになります。そのため、ほとんどの漁師は、他の漁から漁場も近く安心して獲れる、言わば採算の合う“小アユ漁”へと切り替えていくのが例年のパターンです。しかしながら、今年は小アユ漁が危機的な状況にも関わらず、他の漁から切り替えざるを得ないという、苦しい状況を強いられることとなっています。“小アユ漁”は初夏の頃まで行われますが、今はまだ何処かに潜んでいるのだと信じ、この先、状況が好転することを願うばかりです。
 この春の漁を通して改めて思うのは“琵琶湖(自然)とともに生活を営むことの厳しさ”です。昨年の夏から冬にかけては大きな変化もなく、ほぼ順調にきていたにも関わらず、この春、突如として原因不明の危機的な事態が起きています。しかしながら、私どもはこの事態を改善する術もなく、自然に対してあまりに無力ですが、これまでもそうしてきたように事態を受け入れ、琵琶湖とともに歩み、この先好転することを願いながら、乗り越えていけるよう取り組んで参りたいと思います。

“いさざ若煮”

“えび豆”

“こあゆ山椒入り若煮”

※ご自宅でお気軽に湖魚の佃煮など“沖島家庭の味”を楽しんでいただきたく、沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”では通信販売も行っております。ぜひ、ご利用くださいませ。
 詳しくはこちら・・・通信販売「沖島“家庭の味”宅配便」


 お越しいただき、ありがとうございました♪
 〜沖島 桜week〜“お花見セット”でおもてなし♪
 今年は全国的にも桜の開花が早かったように、沖島でも昨年よりも一週間以上早い開花となりました。
 沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”では、この桜の季節を沖島の郷土料理とともに楽しんでいただこうと、4月2日(日)〜9日(日)までを
『〜沖島 桜week〜“お花見セット”でおもてなし♪』と称し、期間中の8日(土)・9日(日)にお得な“お花見セット”を販売させていただきました。今年は桜の開花が思った以上に早かったため、あいにく、販売日両日には桜が散ってしまっており「桜色の沖島で郷土料理に舌鼓♪」とはなりませんでしたが、完売させていただくなど、お越しいただいた皆様にはお詫び申し上げるとともに御礼申し上げます。また、8・9日以外の期間中はご予約にて販売させていただき、“お花見セット”の他“沖島どんぶり”など、大変多くの皆様にご予約いただき、ご好評をいただきましたことも併せて御礼申し上げます。

沖島の味満載“お花見セット”

“沖島どんぶり”
 今年は全国的に桜の開花が早かったように沖島でも早く、観測データによると史上2番目の早さだったそうで、例年は小学校の入学式の頃(8日頃)に見頃を迎えることが多いのですが、今年は4月1・2日頃には満開を迎えました。開花状況も良好で、ちょっとした名所となりました“桜のトンネル(島の西側)”の湖面につきそうなくらいのしだれ具合は見事で、なかなかない光景ではないでしょうか♪ その他、コミュニティセンター前の桜や漁港周辺の桜並木、沖島小学校の校庭など島の至るところで咲き誇り、まさに「桜色の沖島」と言うべく島を桜色に染めてくれました。
 そんな桜が満開になるにつれ観光客の方々も多くなり、沖島通船の運航回数を増やして対応させていただく日もあるほど、大変多くの観光客の方々にお越しいただきました。その活気あふれる様子に感謝申し上げるとともに今後の活力をいただきました。
 今年は4年ぶりに何の制限もない春の到来となり、多くの皆様を“おもてなし”させていただくことができましたこと、大変嬉しく思っております。桜の開花時期を見極めることが出来ず、“沖島 桜week”と開花時期が少しずれてしまったことは残念でしたが、SNSなどの情報発信もあり、満開の時期に併せて多くの皆様にお越しいただくことができましたことに時代の進歩を実感いたします。また、年々、島を訪れる若い方々が増えていることも島の未来つながる明るい兆しと感じております。これからも世代を問わず、楽しんでいただける“島の環境作り”に向けても取り組んで参りたいと思います。

※ 今年の桜の様子は下記の「春の風物詩−沖島の桜」でも、
 ご紹介しております。

◆ 「漁業会館 建替え(リフォーム)計画」設計かたまり予算化へ♪

“現在の漁協会館”
 先の「冬の話題」でも取り上げました『漁業開館 建替え(リフォーム)計画』はその後も順調に進み、この春、具体的な設計が完成したことから、県を通して国へ予算化に向けての「要望書」を提出致しました。
 この設計には、滋賀県立大学の学生の方が在学中から携わり、そのまま設計事務所へ就職後も引継ぎ、設計を完成させてくださいました。その企画書(設計)をもとにこの春、予算化に向けての「要望書」を提出させていただきました。今後の進捗としては、令和5年度内にその内容が精査され、令和6年度に許可がでれば工事業者選定など具体的な着工に向けての準備に入り、遅くとも令和7年度内にはリフォームが終了し、新『漁協開館』が完成する予定です。
 この『建替え(リフォーム)計画』の主な内容は
「建物の耐震化」「レストランなどの開設」です。
 「建物の耐震化」については、老朽化などの問題がない現在の支柱を全部使い、耐震強化として新たに「すじかい」などを使って強化し、問題ありとされた溶接部分は全て溶接し直すなど、建物全体の強度をあげるものです。

“湖島婦貴の会の屋台”
 また、「レストランなどの開設」については、現在、漁協婦人部“湖島婦貴の会”が会館1階の作業場を利用して、ご注文いただいた郷土料理を召し上がっていただいたり、会館前に置かれた「屋台」で湖魚の若煮などのお土産品を販売しております。しかしながら、今の環境は作業場ということもあり、エアコンなどの設備もなく、ゆっくりくつろいでいただける環境ではないのが現状です。
 そこで、今回のリフォーム計画では、このような現状を改善すべく、会館1階の半分くらいに冷暖房完備のブース(部屋)を増設し、湖島婦貴の会が運営を担う「レストラン」を開設することと致しました。また、会館2階の東側のひさし部分の強度を補強し『テラス』を増設する計画もしております。この場所は東向きになることから、朝日が差し込み、日当たりも良好で琵琶湖を見渡せる最高の場所となることでしょう♪
 このように今回のリフォーム計画では、“沖島を存続させていきたい”という願いのもと、この漁協会館を
『沖島の未来につながる拠点』として生まれ変わらせることを目指しております。レストランで、ゆっくり“沖島の味”を楽しんでいただき、ここから島の散策に向われたり、散策のお帰りに立ち寄り、『テラス』などでゆっくり休憩していただける・・・そんな観光拠点となることを願っております。
 しかしながら、期待が膨らむ一方で「漁協会館の運用」に関して“人手不足”が大きな課題となっています。レストランの運営などを担う漁協婦人部“湖島婦貴の会”では、漁協と同じく高齢化が進んでおり、現在のところ後継者もいない状況で現会員がいつまで続けられるかが懸念されています。今の状態では人手不足になることは明らかであり、このことを含めどのような体制作りが必要かを早急に詰めていかなければなりません。
 新『漁協会館』完成後は観光客の方々が増えることは明らかであり、人手を含む体制作りが不十分なことにより、観光客の方々に不愉快な思いをさせてしまっては本末転倒です。観光客の方々に「来て良かった♪」と満足していただき「また来よう♪」とリピーターとなっていただけることを目指していかなければ、今回のリフォームの意味がなくなってしまいます。観光客の方々に、より一層快適に過ごしていただけるような場所を提供し島が賑わえば、それは島の活性化へとつながり、しいては“沖島の存続”にもつながっていくことと期待しております。これからも『日本の淡水湖に浮かぶ唯一“暮らしのある島”』に暮らす者として、世代を問わず楽しんでいただける島の環境づくりに取り組んで参りたいと思います。

◆ 4月1日 新『おきしま資料館』オープンです♪
 令和元年の秋に建物の老朽化に伴い、閉館させていただきました『おきしま資料館』がこの春、新『おきしま資料館』として、建物・場所をリニューアルしオープンいたしました♪
 リニューアルオープンに向け3月29日に「記念式典」が行われ、令和5年4月1日(土)から正式に開館いたしました。
 
新『おきしま資料館』は、『おきしま展望台』から『沖島小学校』へ向う途中の水産加工場だった建物を再利用しオープン致しました。展示内容は“島民の昔からの暮らしや道具などの展示”と変わらないものの、旧資料館よりも天井が高く展示スペースも大きくなったので、漁網なども広げた状態で展示できるなど、以前より臨場感のある展示をご覧いただけるようになりました。
 リニューアルオープンに際しては離島振興推進協議会が中心となり、「パンフレット」の挿絵を小学校の子達が提供してくれるなど島全体で取り組んで参りました。老朽化により旧資料館は閉館となりましたが、このまま先祖代々受け継がれてきた歴史的資料を眠らせしまうことなく、資料とともに沖島で先祖代々が営んできた歴史を島民が引継ぎ、島民だけでなく多くの方々に知っていただくことが、“温故知新”…沖島の未来につながる大切なことと思っております。ぜひ、ご来島の際にはお立ち寄り下さいませ♪
※ 施設維持などのため「入館料300円」を申し受けます。何卒、ご了承下さいませ。

◆ 『鮒ずし手作り講習会』 今年も開催致します♪
  毎年、ご好評をいただいております『鮒ずし手作り講習会』(琵琶湖汽船・沖島漁協共同企画)の日程が決定いたしましたのでお知らせいたします。
 今年度は7月5日(水)、8日(土)、11日(火)、14日(金)、17日(月祝)、20日(木)、23日(日)、25日(火)の日程で開催を予定いたしております。
 お申込み方法など詳細・お問合せにつきましては、琵琶湖汽船ホームページをご覧下さい。

※沖島漁協ではお申込み等の受付しておりませんので、ご了承くださいませ。
〜〜春の風物詩〜〜〜〜〜 ここからは例年の“春の沖島”の様子をご紹介しております
小アユ漁
 小アユ漁は、“細目小糸漁”とよばれる刺し網漁で4月ごろから盛んになります。沖島では、刺し網にかかった魚を独特の方法ではずします。漁船に高く組まれた足場に網を掛け、その網を振るって魚をはずすのです。他で見られることもありますが、この方法は沖島発祥の方法です。そのため、この漁が始まる頃になると、漁船に高い足場が組まれはじめ、まさに沖島の春到来を告げる風景といえます
 また6月の決められた期間ですが、今はあまり行われない“沖すくい網漁”も行われます。沖すくい網漁とは漁船の舳先にとりつけた大きな網で、アユの群れごと、すくい取る漁法です。熟練を要する漁法です。
塩切り鮒の仕込み

 “塩切り鮒”とは「ふなずし」の材料となるもので、春に獲った琵琶湖産の天然“ニゴロブナ”を丁寧にウロコと内臓を取り、3ヵ月程度塩漬けにしたものです。このころの鮒は卵を抱えており、「ふなずし」の中でも特に美味とされています。
 毎年、春が来ると、“塩切り鮒”の仕込み作業が始まります。水揚げされたばかりのニゴロブナを傷つけないように仕込むのは、とても手間のかかる作業ですが、美味しい「ふなずし」を作るには、手の抜けない重要な工程のひとつです。

  “内臓部分は、卵を傷つけないように、えらのところから取り出します。”

 
 
“塩切り鮒”の予約販売を行っています。
 詳しくは、こちらの
“ここをクリック””を
ご覧ください
 
沖島の桜
 沖島の桜の開花は、少し遅めで毎年4月に入ってから咲き始めますが、今年は全国的に桜の開花が早かったように、沖島でも昨年より一週間以上早く開花し、4月1日頃には島の至るところで満開となり、今年も「桜色の沖島」となりました。(撮影日:R5年4月5日曇天)
 島では、あちらこちらで桜が楽しめますが・・・ちょっとした名所ともなりました西福寺を抜けて島の西側にある“桜のトンネル”の湖面につきそうなくらいのしだれ具合は見事でなかなかない光景ではないでしょうか♪ その他、コミュニティセンター前の桜や漁港周辺の桜並木、沖島小学校の校庭など、島の至るところで満開の桜を楽しんでいだけます。
沖島春祭り

 沖島では毎年5月に“春まつり”が行われます。昔から島民が集う行事のひとつで春まつりの頃になると、島から離れて暮らす家族がみな集まり、お正月さながらの賑わいになります。
 お祭りは、前日の夜の“宵宮うつし”から始まり、島の神様“瀛津島神社”の本殿にお祭りするため、神輿倉からお神輿と太鼓を持って上がります。 次の日の祭り当日、14時頃からお神輿を担いでお宮さんから下がり、町内をねり歩き、神輿倉へと向かいます。昔は、天気が良いとお神輿を船に乗せ休暇村まで往復しましたが、最近は安全に配慮して行われなくなりました。
 こうして、16時頃には神輿倉に収め、公園では“なおらい”が始まります。
 昔から春のお祭りになると“ゆぐみだんご”を作ったり、沖島で採れた山菜、筍を使って“煮しめ”を作ったりして家族みんなでいただきます。“ゆぐみだんご”とは、餡の入ったよもぎだんごのことで、沖島の昔ながらの呼び名です。
 また、最近は祭りの次の日に子ども会の呼びかけで、“ケンケン山”へ登り、昼食会をする催しも始まりました。
 このように、昔とは少しずつ様変わりしながらも、沖島の大事な行事のひとつとして受け継いで行きたいと思います。

〜〜春の味覚〜〜〜〜〜
“小アユ”
 琵琶湖のアユは、春に琵琶湖から川をのぼって大きくなるアユと、琵琶湖で生活して大きくならないアユがいます。大半はこの大きくならないアユで、小アユと呼ばれ、春に漁の最盛期を迎えます。
 小アユは、佃煮として食されるのが一般的ですが、島では、天ぷら、唐揚げ、南蛮漬けなどにしても頂きます。小ぶりなので骨が柔らかいのは元より、アユ独特の風味もしっかり味わえる逸品です。
※小アユの佃煮(若煮)は漁業会館前の「湖島婦貴の会」屋台または通販でお買い求めいただけます。
“鮎山椒入り若煮”
“山菜・たけのこ”   
 沖島では、“山菜”は4月から、“たけのこ”は5月頃から出始めます。
 「煮物」にして頂くのが一般的で、山菜に小芋・ニシン(または油揚げ、棒だら)・たけのこ・ふき・赤こんにゃくなど5品くらいを一緒に炊いて頂きます。
“蕨(わらび)”
“よもぎだんご”
 沖島に自生している“よもぎ”を摘んで作ります。中は餡子の丸いおだんごです。また、“さとだんご”と言われるもち粉によもぎと黒砂糖を入れて練ったおだんごも春の沖島の味です
《参考文献》
・ 「琵琶湖の幸 読本」 平成19年9月発行 滋賀県漁業協同組合


トップページへ