“春の沖島”  令和7年度版

 厳しい冬が過ぎ、小アユ漁やフナ漁が始まると、
“沖島の春”到来です。
 沖島の春は、島の所どころに桜が咲き、山では“蕨”“筍”“よもぎ”などの山菜も採れたり・・・とのんびりとした懐かしい春の風景に出逢えます。
 令和7年・春の話題  

 この冬の積雪が雪解け水となって琵琶湖に注ぎ込みみ、桜も開花するとともに沖島も穏やかな春を迎えました。
 今年も桜の季節とともに多くの観光客の方々がお見えになるようになり、ゴールデンウィークには通船が一度に4往復するほど多くの方がお見えになるなど、活気ある春を迎えています。
 そのようななか、今年も4月6〜13日を「沖島 桜week」と称し、6・12・13日には「沖島 桜まつり」を開催させていただきました。ここ数年、桜の開花は例年より早まることがあったのですが、今年は例年並みとなり「桜week」に合わせるかのように咲き始め、week最終日となる12・13日には満開となり、多くの方々に桜まつりを楽しんでいただくことができました。また、毎年5月に行われる“春祭り”にも多く方々がお見えになり活気あるお祭りとなりました。
 また、この冬の大寒波などによる積雪が多かったことから、春の到来とともにたくさんの雪解け水が琵琶湖に注ぎ込み、渇水状態だった琵琶湖も潤う春となりました。そんな春を迎えた沖島から、いくつかの話題をお届け致します♪

◆ “ニゴロブナ漁”好調♪ “小アユ漁”も少しずつ・・・
 今年も春の到来とともに漁の様子も春の漁へと移り変わってきました。昨年は春の漁を代表する“ニゴロブナ漁”や“小アユ漁”が不漁で始まり、好調な滑り出しとは言えませんでしたが、この春は“ニゴロブナ漁”は豊漁、“小アユ漁”も5月に入った頃から少しずつ獲れだすなど、一抹の不安はあるものの好調さを感じる状況となっています。

“ニゴロブナ漁”豊漁です♪
 この春の“ニゴロブナ漁”は好調で「塩切り鮒の予約販売」や「鮒ずし手作り講習会」の必要量が4月の始めには確保できるほどの“豊漁”となりました。“ニゴロブナ漁”は例年2月20日頃から水揚げが始まります。昨年は4月上旬時点でも必要量の半分ほどしか獲れず必要量が確保できるか不安な状況でしたが、今年は「冬の話題」でもご紹介したように冬の漁でニゴロブナの稚魚を多く見かけたことから「この春のニゴロブナ漁は期待できるのでは・・・」という推測どおりの豊漁となり、安堵する状況となりました。魚の状態も良好で豊漁だったこともあり、20cm以上の小さ過ぎず大き過ぎないサイズの卵の抱え方も良いもので揃えることができました。魚のサイズが揃っていることは漬け上がりにムラがなくなり、美味しい「鮒ずし」の漬け上がりに繋がります。毎年「鮒ずし手作り講習会」の鮒ずしはご好評をいただいておりますが、このようなことからも今年はより一層美味しい鮒ずしになるのでは…と、今から楽しみです。


“ヒウオ(小アユの稚魚)”

“小アユ”
 “小アユ漁”については、 この冬の“ヒウオ(小アユの稚魚)漁”が過去にない不漁で目標量を達成しないまま終える状況となったため、この春の“小アユ漁”も不安視されていましたが、5月に入って刺し網漁が始まると、少しずつ水揚げが上がるようになってきました。このことはニゴロブナ漁などの沖引き漁が4月いっぱいで終わり“小アユ漁”へとシフトしてきたこともありますが、昨春の危機的に獲れなかった状況を思うと、少し明るい兆しを感じる状況となってきています。しかしながら、獲れるポイント(場所)が特定的であることから、獲れてはいるものの絶対量としては例年に比べ少なくなるのでは・・・という懸念のある状況でもあります。

“足場が組まれた刺し網漁の漁船”
 一方、成育状況は10cmを少し超えるくらいのものが獲れており順調に成長してきていると思われます。毎年、琵琶湖では“小アユ漁”の安定化のために産卵環境を整えた人工河川に親アユを放流し産卵を促すのですが、水産課によると、危機的な状況だった前期は2割ほどだった産卵状況も今期は4割の産卵があったと予測されています。このことからもこの順調な成育状況が続けば、これから夏に向けての水揚げにも期待が持てるのではないか・・・と思います。
 冬から引き続き行われていた“ホンモロコ漁”や“スゴモロコ漁”は4月いっぱいで沖引き漁が終了し、平均的な水揚げがありましたが、5月に入って、ほとんどの漁師が“小アユ漁”に移行するため、水揚げとしては少なくなっています。

沖島の“えび豆”

 そして今、最も懸念されるのは“スジエビ漁”です。昨年の11〜12月にかけて危機的な状況でしたが1月後半頃少し水揚げがあったものの、この春も不漁が続いてます。現在は、ほとんどが「釣りエサ用」としての水揚げで湖魚料理を代表する“えび豆”などに用いる「鮮魚」としての水揚げはない状況となっています。そのため、漁協婦人部『湖島婦貴の会』の沖島産“えび豆”も販売中止となっています。

 ここまで好調さを感じる春の漁の様子をご紹介して参りましたが、これから夏に向けて一抹の不安も感じています。一つ目は、これから夏に向けて7月中頃に解禁となる“ウロリ漁”が始まるまでの水揚げは“小アユ漁”だけ(主流)となります。そのため、この先の“小アユ漁”に期待はするものの何分にも自然が相手のため、このまま順調に水揚げが伸びていってくれるのかは未知数…ということです。そして2つ目は琵琶湖の状態です。漁や湖魚の成育にとって琵琶湖の状態は重要な要因となり、琵琶湖の状態によって湖魚は行動を変えるため、経験値が活かせなくなり漁も難しくなるからです。現在の琵琶湖の状態は長く続いてきた渇水状態が改善してきており、水位的には良い状態だと思います。この渇水の改善は、この冬の大寒波などによる積雪が大量の雪解け水となって流入し、降雨量も比較的あったことなどによるものと思われます。沖島漁港でも雨が降ると漁港の階段のところまで水が上がってくる時があり、水位の高さを感じさせます。しかしながら、琵琶湖は京阪神の水がめでもあることから、水位に関係なく常時一定量を取水されているため、いつまでこの水位の良い状態を保てるかが懸念されるのです。

 この春は、“ニゴロブナ漁”の豊漁など昨年に比べれば少し明るい兆しを感じさせてくれるスタートとなりました。これから迎える梅雨が琵琶湖の水位を維持させてくれる雨量をもたらしてくれるよう期待し、今はこの明るい兆しが夏に向けて続いていくことを願うばかりです。


“こあゆ山椒入り若煮”
★ ご自宅でお気軽に湖魚の佃煮など“沖島家庭の味”を楽しんでいただきたく、沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”では通信販売も行っております。ぜひ、ご利用くださいませ。
 詳しくはこちら・・・
通信販売「沖島“家庭の味”宅配便」


 大盛況“沖島 桜まつり” ご来島ありがとうございました♪
 〜沖島 桜week〜&“沖島 桜まつり”
 今年も沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”では、桜色の沖島を沖島の郷土料理とともに楽しんでいただこうと4月6日(日)〜13日(日)までを〜沖島 桜week〜桜色の沖島で郷土料理に舌鼓♪と称し、期間中の6日(日)・12日(土)・13日(日)には“沖島 桜まつり”を開催させていただきました。
 今年の桜は「桜week」に合わせるかのように咲き始め、12日(土)・13日(日)には満開となり、大変多くの方にお越しいただきましたこと御礼申し上げます。また、「桜まつり」で販売させていただきました
お得な“お花見セット”も完売となり、その他のご提供させていただいた商品や平日の予約販売も大変ご好評をいただきましたこと、併せて御礼申し上げます。

びわ湖魚グルメ
“よそものえびナゲット”

“沖島の桜餅”
 また、今年の新メニューとして“びわ湖魚グルメ「よそものえびナゲット」”も販売させていただきました。この商品はご当地グルメとして県が主催する『びわ湖魚グルメ』の“えび豆コロッケサンド”に続く第2弾として開発され、沖島で水揚げされた天然のブラックバスとスジエビをすり身にし、塩・コショウで味付けした“沖島ならではのナゲット”です。こちらも大変ご好評をいただき、今後に繋がる大きな励みをいただきました。その他、沖島の桜の塩漬けをのせた“沖島の桜餅”(通称:つくつくだんご)などもご提供が追いつかないほどのご好評をいただきました。それとともに出来る限りの対応をさせていただきましたが、ご希望に添えなかった皆様には心よりお詫び申し上げます。

 今年の沖島の桜は昨年に比べると、やや遅く咲く始めましたが、「桜week」の始まりとともに順調に開花し、「桜week」の終盤12日(土)・13日(日)には見事に満開となり沖島を桜色に染め、お祭りに華を添えてくれました。今年は土日に合わせて満開になりお天気にも恵まれたことから、大変多くの皆様に“桜色の沖島”を楽しんでいただけたのではないでしょうか♪ 私どもも大変多くの皆様に“おもてなし”をさせていただきましたこと、喜びとともに感謝申し上げます。また、このように回を重ねるに連れ、多くのお客様にお越しいただけるようになってきたことは、「春のイベント」として定着し、多くの皆様が知るイベントになってきたことを実感させていただきました。この実感を今後に繋がる励みとし、これからも世代を問わず、より一層多くの皆様に楽しんでいただける…そんな“おもてなし”をさせていただけるよう、取り組んで参りたいと思います。


※ 今年の桜の様子は下記の「春の風物詩−沖島の桜」でも、
 ご紹介しております。

◆ 『鮒ずし手作り講習会』 今年も開催致します♪
  既に「新着情報」および「イベント情報」でご案内のとおり、今年も毎年ご好評をいただいております『鮒ずし手作り講習会』(琵琶湖汽船・沖島漁協共同企画)を開催させていただきます。
 今年は“ニゴロブナ”が豊漁だったことから、20cm以上の小さ過ぎず大き過ぎないサイズのもので大きさが揃い、卵の抱え方も良いものを確保することができました。また、鮒ずし作りには欠かせない“米”も米不足や価格高騰により充分な量を確保できるか不安視されていましたが、充分な量を確保することができました。毎年、「鮒ずし手作り講習会」の鮒ずしはご好評をいただいておりますが、今年は、より良い材料が揃えられたことで、リピーターの方にも初めての方にも喜んでいただける、より一層美味しい鮒ずしになるのでは…期待しております。
 また、今年は米などの諸物価高騰により講習会費用を値上げさせていただきました。何卒、ご理解ならびにご了承いただきますよう、お願い申し上げます。


※ お申し込みは「新着情報」および「イベント情報」でご案内のとおり、5月31日(土)をもって
 締め切らさせていただいております。
※ 「講習会」の詳細については「イベント情報」または「琵琶湖汽船ホームページ」をご覧下さいませ。
〜〜春の風物詩〜〜〜〜〜 ここからは例年の“春の沖島”の様子をご紹介しております
小アユ漁
 小アユ漁は、“細目小糸漁”とよばれる刺し網漁で4月ごろから盛んになります。沖島では、刺し網にかかった魚を独特の方法ではずします。漁船に高く組まれた足場に網を掛け、その網を振るって魚をはずすのです。他で見られることもありますが、この方法は沖島発祥の方法です。そのため、この漁が始まる頃になると、漁船に高い足場が組まれはじめ、まさに沖島の春到来を告げる風景といえます
 また6月の決められた期間ですが、今はあまり行われない“沖すくい網漁”も行われます。沖すくい網漁とは漁船の舳先にとりつけた大きな網で、アユの群れごと、すくい取る漁法です。熟練を要する漁法です。
塩切り鮒の仕込み

 “塩切り鮒”とは「ふなずし」の材料となるもので、春に獲った琵琶湖産の天然“ニゴロブナ”を丁寧にウロコと内臓を取り、3ヵ月程度塩漬けにしたものです。このころの鮒は卵を抱えており、「ふなずし」の中でも特に美味とされています。
 毎年、春が来ると、“塩切り鮒”の仕込み作業が始まります。水揚げされたばかりのニゴロブナを傷つけないように仕込むのは、とても手間のかかる作業ですが、美味しい「ふなずし」を作るには、手の抜けない重要な工程のひとつです。

  “内臓部分は、卵を傷つけないように、えらのところから取り出します。”

 
 
“塩切り鮒”の予約販売を行っています。
 詳しくは、こちらの
“ここをクリック””を
ご覧ください
 
沖島の桜
 沖島の桜の開花は対岸より少し遅めで、例年4月に入ってから咲き始めることが多かったのですが、最近は少しずつ早まっているような感じでしたが、今年は例年を思わせるように4月6日頃から咲き始め、撮影日の8日頃はまだ五、六部咲きでしたが、気温とともに一気に開花が進み、「沖島 桜まつり」を開催した12・13日頃には満開となりました。
 沖島の桜の開花は、例年、漁港近くの桜から一斉に咲き始め、島の西側の“桜のトンネル”などへと開花が進み、島全体が桜色となります。今回の撮影では漁港近くもまだ五分咲きだったため、“桜のトンネル”は、ほぼ開花していない状態でした。
(撮影日:R7年4月8日 曇時々晴れ)
 毎年、島のあちらこちらで桜が楽しめますが・・・ちょっとした名所ともなりました西福寺を抜けて島の西側にある“桜のトンネル”の湖面につきそうなくらいのしだれ具合は見事でなかなかない光景ではないでしょうか♪ その他、コミュニティセンター前の桜や漁港周辺の桜並木、沖島小学校の校庭など、島の至るところで満開の桜を楽しんでいだけます。
★ 過去の桜の様子は『沖島 桜アルバム』
 ご覧いただけます。
 
沖島春祭り

 沖島では毎年5月に“春まつり”が行われます。昔から島民が集う行事のひとつで春まつりの頃になると、島から離れて暮らす家族がみな集まり、お正月さながらの賑わいになります。
 お祭りは、前日の夜の“宵宮うつし”から始まり、島の神様“瀛津島神社”の本殿にお祭りするため、神輿倉からお神輿と太鼓を持って上がります。 次の日の祭り当日、14時頃からお神輿を担いでお宮さんから下がり、町内をねり歩き、神輿倉へと向かいます。昔は、天気が良いとお神輿を船に乗せ休暇村まで往復しましたが、最近は安全に配慮して行われなくなりました。
 こうして、16時頃には神輿倉に収め、公園では“なおらい”が始まります。
 昔から春のお祭りになると“ゆぐみだんご”を作ったり、沖島で採れた山菜、筍を使って“煮しめ”を作ったりして家族みんなでいただきます。“ゆぐみだんご”とは、餡の入ったよもぎだんごのことで、沖島の昔ながらの呼び名です。
 また、最近は祭りの次の日に子ども会の呼びかけで、“ケンケン山”へ登り、昼食会をする催しも始まりました。
 このように、昔とは少しずつ様変わりしながらも、沖島の大事な行事のひとつとして受け継いで行きたいと思います。

〜〜春の味覚〜〜〜〜〜
“小アユ”
 琵琶湖のアユは、春に琵琶湖から川をのぼって大きくなるアユと、琵琶湖で生活して大きくならないアユがいます。大半はこの大きくならないアユで、小アユと呼ばれ、春に漁の最盛期を迎えます。
 小アユは、佃煮として食されるのが一般的ですが、島では、天ぷら、唐揚げ、南蛮漬けなどにしても頂きます。小ぶりなので骨が柔らかいのは元より、アユ独特の風味もしっかり味わえる逸品です。
※小アユの佃煮(若煮)は漁業会館前の「湖島婦貴の会」屋台または通販でお買い求めいただけます。
“鮎山椒入り若煮”
“山菜・たけのこ”   
 沖島では、“山菜”は4月から、“たけのこ”は5月頃から出始めます。
 「煮物」にして頂くのが一般的で、山菜に小芋・ニシン(または油揚げ、棒だら)・たけのこ・ふき・赤こんにゃくなど5品くらいを一緒に炊いて頂きます。
“蕨(わらび)”
“よもぎだんご”
 沖島に自生している“よもぎ”を摘んで作ります。中は餡子の丸いおだんごです。また、“さとだんご”と言われるもち粉によもぎと黒砂糖を入れて練ったおだんごも春の沖島の味です
《参考文献》
・ 「琵琶湖の幸 読本」 平成19年9月発行 滋賀県漁業協同組合


トップページへ